初代「SimCity」を体験したきり、シムシティをプレイしていない
オールドゲーマー、シムシティソサエティーズをプレイしてみる。
体験者:豊臣和孝
初めて本作の日本語版パッケージを手にしたとき「『SimCity』をやるのは、はたして何年ぶりだろうか……」と感慨深い心境に陥ってしまった。1989年にマッキントッシュで初代「SimCity」がリリースされてから、かれこれ19年。ひとくちに「SimCity」シリーズといっても、ユーザーごとに思い出される作品が異なっていても全然おかしくない。
たとえば、筆者のような30台後半のオールドゲーマーは、恐らくPC-9801などの国産PCで初代「SimCity」を体験した人が多いのではないだろうか。当初「マックで『SimCity』って超凄いシミュレーションゲームがあるらしいよ」とゲーム仲間同士の会話に出たり、あるいは雑誌などで記事を眺めて興味を抱くことはあったが、いかんせん当時のマックは“高級品”のたぐい。小額のバイト収入でやりくりしている学生風情に買える代物ではなく、当時のボクらは国産PC向けにリリースされるタイトルをガツガツと遊んでいた。
だが、そんな初代「SimCity」が、PC-9801シリーズでも発売されることになった。特集が組まれた某PCゲーム誌を読んでテンションを上げつつ、発売日を待つこと数カ月。高ぶる期待を胸にゲームを立ち上げると、モニタにはざっくりと開けたシンプルな画面が広がっていた。広々とした土地に、発電所、住宅地、商業地、工場などを設置して、あとは発展の様子を眺める。今でこそ自立発展型の箱庭ゲームは普遍的だが、この初代「SimCity」こそ“すべての箱庭風ゲームの元祖”ともいうべき存在で、それからしばらくは文字どおり寝食を忘れてのめりこんでいった。寝不足のまま友だちと「昨日は10万人まで人口を増やしたよ」、「税率ってどうすれば一番効率がいいのかな」などと話をしたら、帰宅して即ゲームを立ち上げて色々と試してみる。さすがに半年もすると若干トーンは落ちていったが、それでもしばらくすると「またやってみるかなぁ」とディスクを引っ張り出してはゲームを立ち上げて遊んでいたものだ。
以後、シリーズの続編がでるたびに「あの『SimCity』シリーズ最新作!」と喧伝されていったわけだが、実はボクらおっさんゲーマーにしてみると少々事情が違っていた。というのも「う~ん、初代『SimCity』は凄く熱中したけど、それから先のシリーズはどんどん煩雑な要素が増えて、ちょっと荷が重いかなぁ……」という、年齢からくる衰えとでもいうべきか。コンシューマなどでリリースされる「SimCity 2000」、「同3000」や派生シリーズくらいまでなんとか食いついていったのだが、そのあたりで“疲れ”のようなものが生じてしまった人が少なくないようだ。このあたりから入った人は「これぞ『SimCity』だ!」と絶賛するし、それも凄く納得できる。前作なども実際やればとても面白いのだが、ボクらの年齢では「仕事の合間や寝る前にちょっとプレイ」というよりは「祝祭日に腰をすえてガッツリ」という姿勢で臨まないとキツイ。コンシューマを中心に「Sim」シリーズの派生商品が増えてきたこともあり、自然と本筋のシリーズから遠ざかっていたというのが実情だ。
そんなおり、冒頭で触れたシリーズ最新作「Simcity Societies」に触れる機会を得た。最初は「いや、さすがにここまでくると『3000』や『4』なんて目じゃないくらい手間かかるんでしょ?」と腰が引けてしまったが、様子をうかがってみると、どうやらそうではないらしい。むしろ、これまでのコアな方向性とはまったく逆のアプローチで、タイトルにもある“Societies”すなわち集団、社会、地域的なつながりとでもいうべきか。そういった部分の表現に力が入っているようで、改めて興味がわいたためプレイしてみたというわけだ。
実際プレイしてみると、基本は何も変わっていない。風力など電力発電所を建設して、まずは街全体の電力を確保。電力残量は画面下にあるゲージでひとめでわかる。続いて道路で交通インフラを整備し、住宅、職場などを少しずつ充実させていく。初代『SimCity』との大きな違いは、住宅や職場などが自立的に発展していかないこと。少しずつチマチマと様子が変わっていくのも面白かったが、これはこれで整理されており全然オーケー。シミュレーションゲームに不慣れな人も、これならわかりやすいはず。ちなみに、ファーストプレイ時はチュートリアルからそのまま本編に突入する
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チュートリアルは、操作はもちろんプレイの流れなどを丁寧に教えてくれる。
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最初にチュートリアルからプレイするときは、そのままゲーム本編に突入。自然な流れで遊べるのがいい。
さらに街を発展させようとすると、ここで本作ならではの新要素「社会的価値フィルター」が顔をのぞかせてくる。画面右下に表示される「工業」、「財産」、「創造」、「信仰」、「服従」、「知識」といった各フィルター。これらはすべて、住宅、職場、装飾、娯楽施設を建設することで増減。マイナスになると、ポイントが必要な建物は建てられなくなる。たとえば、普遍的な住宅「コテージ」を建てるには、創造を1ポイント消費する。創造を増やすには「演劇学校」を建てたり、像、公園、記念碑などの装飾を作るのが手っ取り早い。プラスとマイナスの組み合わせ、すなわち「全体として社会的価値がプラスになる」よう、街を発展させていくところに本作の肝がある。
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左上のスペースに「チャリティセンター」を建設する
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建設と同時に信仰がプラス8、財産がマイナスされる。
面白いのは、建物によって社会的価値が異なり、円滑な発展を目指すにはそれぞれが密接にリンクしていくことだ。工業を増やしたいからといって「スラム居住区」、「安アパート」などを乱立させれば病気のシム、火災の発生確率が増え、治安も悪化しやすい。さりとてお上品な住宅や建物ばかり並べると、施設が偏ってしまうし、なにより街の発展が鈍化する。警察や消防署なども最初のうちは不要だが、放置しておくといざというとき大変なことになる。このあたりは市長たるプレイヤーの価値観よるため「どれが一番いい」とはいえないが、逆にいえば“それだけ多彩なバリエーションを持った街が作れる”という証明でもある。
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スラム、安アパート、睡眠チューブなどの高密度住宅は、人口を増やすには有利だが当然デメリットもある。
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突如火災が発生! 消防署があれば迅速な消火活動が可能だが、放置しておくと焼け落ちて施設は機能不全に。
街づくりには、プレイヤーの個性が如実に反映される。社会的価値フィルターのポイントがマイナスになる建物は建てられないといった制限はあるが、よほど無計画に建設したのでもなければ、それなりに街は発展していく。慣れないうちは生産高や人口など効率重視になりがちだが、全体にシンプルで余裕があるシステムのため、わりと早い段階で好みの街づくりに着手できるのがいい。住人のご機嫌取りに奔走するのもいいし、街中を奇怪なオブジェだらけにしても問題なし。筆者はまだ未体験だが、発展のさせかたによっては住民が市長たるプレイヤーのやりかたに猛反発してきたり、あるいはそれを集団抗議という形で示してくるイベントもあるというから驚きだ。
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街の情報は画面左下のメニュー「都市情報カード」で一目瞭然。状態を把握したいときはチェックすべし
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たまに「産業が好景気!」などのイベントが発生。建設費用が軽減されるなどメリットがあるので積極的に利用したい
「このシリーズはやったことないけど、街並みばかりみて退屈そう」と先入観を抱かれる人もいそうだが、本作はそんなことはない。街の住人「シム」たちはバーチャルな街できちんと生活を営んでおり、クリックすることで名前、家族、状態、満足度はもちろん、所有アクセサリから勤務先、さらには行動を観察することまで可能。建物によっては、街や住人に特殊な影響を与える「放火魔」、「用心棒」、「セレブ」、「カルト教団員」、「長老」、「環境保護活動家」、「ヒッピー」、「フーリガン」、「マッドサイエンティスト」、「ロックスター」、「大道芸人」、「スラムの王」、「ゾンビ(!)」などなど、多種多様な住人が発生することもある。どの建物からどんなシムが発生するかは、画面下の建設メニューからいつでも確認可能。街の発展同様、こうした住人たちを観察するのも楽しいもの。どんな仕草を見せてくれるのか、色々と試してみるといいだろう
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「不気味な納屋」はイベントを発生させると霊を召還できる。こうしたお遊び要素が用意された建物は要チェック
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「スラム居住区」からスリが発生。リスクとリターンの管理も市長たるプレイヤーの重要な役割
システム全体がシンプルに整理された一方で、3D化された繊細なグラフィック、住人たちの凝った動き、イベントつきの建物、達成目標など、シリーズで培われた新要素の幹は残されている。シリーズのコアなファンからは不満の声が出るかもしれないが、筆者など、初代『SimCity』で魂を焦がしたものの続編でやや疲れがでてしまったおっさんゲーマー諸氏をはじめ、「SimCity」シリーズが初体験という人には間違いなくオススメできる内容。老若男女、誰でもすぐに“自分だけの街づくり”が楽しめる。マウスだけでなく、キーボードも併用できる優れた操作性もポイントのひとつ。シミュレーションゲームが苦手な人も、ぜひ一度この機会にプレイしていただきたい。
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マップ端から街全体を見渡せるようマウスで視点を操作。キーボードを併用すると視点操作がグンと楽になる。とっつきやすいシステムとグラフィックで、誰にも楽しめる優れたシミュレーションゲームだ










