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 戦場がここに再現された!
  私はこれまでTVゲームの類に対し、極めて批判的な考えを有していた。いかにもといったゲーム内容のものが目立ち、そこでは単に暴力的な面だけを強調しているなど、その多くが知的要素を欠いていた。すなわちストーリーが荒唐無稽で底が浅く、現実感の伴わないグラフィックと音作りのため創りものの域を出なかった。
 しかしながらこの〈メダルオブオナー ライジングサン〉を観て、そうした先入観は一掃されたのである。何より兵士たちの動作がスムーズであり、セリフや行動によって活き活きと描き出されている。しかも考証がしっかりしている点が、極めて印象的だった。
 この〈ライジングサン〉に接して、まず画像が美しくリアルなことに驚いた。そして、音響がまた素晴らしいのだ。更に加えてそこに史実に基づくストーリーが存在している。
 真珠湾から始まってコレヒドール陥落、ガダルカナル上陸、ヘンダーソン飛行場の攻防、シンガポールの陰謀、フライング・タイガー、戦場にかける橋、そして野望が沈むときといった八つの戦場を転戦してゆく。どれもスピード感を十二分に有し、またリアルに戦場が再現されてある。つまり戦闘とそれぞれの戦場の雰囲気を見事に伝えてくれる。
 主人公の使用する武器もBAR(ブローニング自動小銃)、コルトM1911ガーヴァメント、ウェルロッド暗殺用拳銃、トンプソン短機関銃、スプリングフィールドM1903狙撃銃、M1ガーランド半自動ライフル、ステン短機関銃、ウィンチェスターM1893ショットガン、二・三六インチバズーカ砲、11年式軽機関銃、99式軽機関銃といった具合に、実にヴァラエティが豊かだ。これはそれぞれの戦場によって変化してゆくが、すべて史実、あるいは使用された時期を的確に反映してある。
 これら半世紀以上を経たアメリカ、イギリス、そして日本製の兵器について、姿や形だけでなく発射音、あるいは操作音などをそっくり具現してくれている。実際に本物の兵器を用いて射撃し、その音を録音したものであろう。11年式軽機関銃だけがチェコの軽機関銃に似て、もう少し軽く弾けるような音だと思うが、その一点を除いて間違いなく本物だった。
 またM1ガーランドの場合、八発を発射し終えるとクリップを自動的に排出するが、その際の軽やかな音は、まぎれも無く私の耳が覚えているそれである。ショットガンのポンプ操作やステン短機関銃の弾倉の交換音まできちんと再現されている点も素晴らしい。こうした細部に到る積み重ねがあって、初めてリアルな戦場が再現されるのだ。
 随所にカットのごとく実写フィルムを挿入しているのも、戦史ファンにとって嬉しい配慮だと言えよう。当時の新聞や銃後のポスターも極めて興味深い。これは私が戦記物、あるいは歴史物を書くとき、同時代のものを含めて資料をひと抱え集めてくるのと変わらない。
 そうした資料を背景とする考証は、市街が出てくる場面などに於いて、顕著な形で活かされている。1940年代のフィリピンやシンガポールの描写で、思わず頷ける街並みが登場するあたりにもはっきり垣間見られ、臨場感を観る者に与えてくれるのである。とりわけフィリピンのカトリック教会の鐘楼やシンガポールの波止場の場面がそれだ。
 戦場では一秒どころか、時に数分の一秒といった短時間のうちに、決断を迫られることがある。それをやってのけない限り生き残れないのだ。どの兵器を使用し、どのような戦術を組み立ててゆくか、即座に決めて実行に移すのが歴戦の優れた戦士だと言える。
 私の経験した実際の戦場における、強い兵士の条件を挙げてみる。第一が決断力に富んでいること。第二が沈着冷静なこと。第三が優越した体力と精神力を持っていること。それらが何より増して重要になってくる。ゲームに勝ち抜くのもまた、最初の二点が不可欠な要素となるのは間違いないだろう。
 戦場に突入するに際して、躊躇は死を招く、という一点はぜひ忘れないで欲しい。実際の戦場の緊迫感、そしていつ襲ってくるか判らない死の危険を、このゲームで十二分に体験してもらいたい。
 では諸君の健闘を祈る!。
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柘植久慶プロフィール

  • 1942年愛知県生まれ。65年、慶応義塾大学法学部政治学科卒業。
  • フランス傭兵部隊として61年コンゴ動乱、62年アルジェリア紛争に参加。
  • 70年からラオス政府軍の格闘術教官として対ゲリラ戦を指揮。
  • アメリカ軍から特殊部隊指揮官としてスカウトされ、ベトナム戦争を含む数々の作戦でグリーンベレー小隊を率いる。
  • 退役後、85年より著作活動をスタート。ノンフィクション、フィクションの戦争小説、サバイバル術、古今の戦史解説や歴史小説など著作は多数。