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ショーン・カレリーへのインタビュー 2004 1.28


以下のインサイダー情報は、ニュースレター『コミュニケ』の登録者だけに特別版としてリリースされたものだ。


ショーン・カレリーは『ジェームズ・ボンド007 エブリシング オア ナッシング』の楽曲を担当。彼はまた、テレビシリーズの『24』の楽曲担当でもある(これによって彼はエミー賞を受賞した)。超多忙なスケジュールにもかかわらず、彼は親切にも我々のために時間を割いてくれた。そこで我々は、彼のキャリアとゲーム音楽の作曲について、いくつかの質問をぶつけてみた。

ヤーブロー:カレリーさん、今日は時間を取ってくれてありがとうございます。まず最初に伺いたいんですが、どんなふうにしてエレクトロニック・アーツ(以下EA)から『エブリシング オア ナッシング』の作曲の話が来たんですか?

カレリー:EAはずっと以前から作曲家の選定をしていました。それで僕のエージェントが申し込んだんです。他の候補者が007のゲームに興味をそそられて応募するのと同じようにね。僕はゲームの原案を基にして、いろいろなスタイルの音楽を組み合わせてみました。そうしたら数人の最終候補者の中に僕も残ったんです。それで、まずはプロジェクトの音楽関係の重要なスタッフと、電話で30分ほど話をしました。その後、EAの幹部役員であるスティーブ・シュヌレと2人っきりで話をしたんです。このプロジェクトの作曲家として選ばれたときは本当に興奮しましたよ。

ヤーブロー:『エブリシング オア ナッシング』のオーディオディレクターが教えてくれたんですが、あなたは色々な音響効果を『エブリシング オア ナッシング』の曲の中に要素として取り入れたそうですね。その結果がどんなものになっているか、ヒントでけっこうですから、ちょっと説明していただけませんか?

カレリー:今回は伝統的な音の反響(つまりオーケストラ)と非有機的な音の構成を結合させて、プレイヤーを音の面からも楽しませたかったんです。開発段階の画面からは、本当にいいインスピレーションを受けましたよ。それくらい内容が濃くて、深みがあったんです。それに、1つ1つのミッションに独特の「エネルギー」や「雰囲気」がありました。中には緊迫していて物音ひとつ立てられないような雰囲気のミッションもあって、そんなミッションでは差し迫っていて緊張した感じをより強く印象付けるため、効果音に奇妙なビートを混ぜたりしています。とはいっても、ゲームを中断して効果音に耳を傾け、それによって危険を察知してもらおうというわけじゃありません。僕が作ろうとしている楽曲は、あくまでもゲームの「裏方」です。

ヤーブロー:どのように音を使ってプレイヤーの緊張感なんかを盛り上げるんです? 何かパターンみたいなものがあるんですか、それともプロジェクトごとに最初から考えるんですか?

カレリー:パターンみたいなものはないですね。なんといってもこのゲームは製作途中(2003)で、まだまだ進化し続けていますから、いろいろ考えなければならないことが生まれてくるわけですよ。でも、ドラマチックで雰囲気を盛り上げるための鍵のひとつは、曲を「はめ込む」ことじゃないでしょうか。「はめ込む」というのは、曲が聞こえてくるタイミングを決めることです。もし音楽がゲームの最初から最後まで同じ調子で流れていたら、大切なシーンのインパクトが弱まってしまうでしょう?  EAのプロデューサーの方たちも、この点では僕と同意見でした。どういうことかというと、プレイヤーが音楽なしではプレイしたくないと思うゲームを作ろうという考えが最初からあったわけです。

ヤーブロー:アクションやドラマ仕立ての作品と比べて、スパイ物の作曲はどこか違いましたか?

カレリー:うーん、なんとも言えませんねえ。この質問の答えの手がかりは、初めてこのゲームの映像を見たときにあるかもしれませんね。というのも、そのとき初めてミッションを実際に経験したんです。ミッションを進めていくと、いろいろなことが印象に残ると思います。ボンドは走っているのか? それとも敵に見つからないように注意しながら歩いているのか。ミッションの奥深さと長さは千差万別で、他より歯ごたえのあるミッションもあります。まわりは敵だらけなのか、それともボンドしかいないのか? ミッションの目的にしたところで、誰かを救出しようとしているのか、はたまた爆弾をしかけようとしているのか?  そのシーンの色やトーンは? 日中なのか夕方なのか? 場所は? 暗い廃屋の中なのか、それとも晴天の日の山腹の崖なのか? こういったことをすべて考慮しなければならないわけです。実際、こうしたちょっとした手がかりから多くのことを理解しようと常に努力しつづけるのは、僕にとっても挑戦でしたよ。

ヤーブロー:『エブリシング・オア・ナッシング』の楽曲は、製品ができ上がってからではなく、製作前に先立って始められたわけですが、ゲームの製作と同時進行で作曲するのはどんな経験でしたか?

カレリー:ゲーム音楽の作曲は、アニメーション音楽の作曲にちょっと似ていますね。絵コンテ以外は一部のセリフとタイミングがわかっているだけで、実際の画像は作業中に少しずつ完成していくわけです。でも似ているのはここまでかな。『24』のアクションシーンの音楽を例に挙げれば、別に視聴者が何度見直そうが、物語の展開と各シーンで流れる音楽は変わらないわけです。でも、ゲーム音楽の演奏時間は毎回変わるんですからね! どんな風に音楽が再生されるかは、完全にプレイヤーの行動しだいです。だから僕は、劇的に一息入れたり、盛り上がったりする曲を書くように努めました。目指したのは、ゲームの進行に対応しつつ、映画音楽のようでもある曲です。
あと、ゲームの製作っていうのは、作業が終わる直前まで何が起こるか全くわからないんですよ。このゲームでも、作業途中にいくつかのミッションがより過激に修正されました。新しいシーンが追加されることもありましたね。映画なら1シーンを撮りなおすだけでものすごいお金が飛んでいってしまうんですが、ゲームではそのあたりの変更がはるかに簡単です。そんなわけで、変更箇所と他の箇所のつじつまを素早く合わせることを要求されましたよ。

ヤーブロー:今回は65人編成のオーケストラを指揮したわけですが、どんな経験でした?

カレリー:世界最高の演奏家たちでした。ハリウッドの一番人気のあるアクション物の曲を一年中弾いている人たちですからね。一緒に働けてどんなに楽しかったか、口では説明できませんよ。才能があって、プロフェッショナルで、礼儀正しくて、熱心で……技術的に高度な曲を少し練習しただけで自分たちのものにしてしまったんですから脱帽です。あのときは何ダースもの楽譜の印刷が間に合わなくて、練習時間が2日弱しかなかったんですが、彼らはくじけずにやりとげたんです! まったく、彼らに神の祝福あれ、ですよ。ボンドのテーマ曲が20thセンチュリー・フォックスのニューマン・スコアリング・ステージで演奏された瞬間は感動に震えたものです。彼らもボンドのゲームにとても興奮した様子で、多くの演奏者がゲームが発売されたら1つ欲しいといっていましたよ。

ヤーブロー:あなたが若いころに最も影響を受けたのは誰でしょうか?

カレリー:ちょっと答えるのに難しいですね。いろいろな人の影響を受けましたから。今でもジョン・ウイリアムスは偉いと思っています。クラッシク音楽をベースにしてカッコいい曲に仕立て直したんですから。彼のレコードは全部持っていますよ。若いころはレコードの針がもつ限り、繰り返し聞いて勉強したものです。彼の作品はいつも際立っていて、すごく刺激を受けました。あとはバーナード・ヘルマン、イゴール・ストラビンスキー、ブライアン・イーノ、ピーター・ガブリエルなんかの影響も大ですね。他にもたくさんいるんだけど、とりあえずはそんなところかな。

ヤーブロー:これまでにしてきた『スタートレック』のTVシリーズや『ディープスペース・ナイン』の音響効果デザイナー/編集者としての仕事はどうでしたか? 作曲家として成長するのに役立ちましたか?

カレリー:シリーズの音響効果をデザインすることで、作曲について本当にいろいろなことを学びましたよ。音楽と効果音、それにセリフの関係がわかったことは、僕にとって最初のシリーズであるUSAネットワークの『ラ・フェム・ニキータ』の作曲で計り知れないほど大きな武器になりました。デニス・マッカーシーやジェイ・チャッタウェイの素晴らしい音楽を聴けたのも良かったですね。彼らがどうやってああいうハイクオリティーな番組に選ばれたのかも聞けましたし。

ヤーブロー:少し話題がずれますが、耳の聞こえない人に音楽とは何かと問われたとき、あなたなら何と答えます?

カレリー:大学時代、同じ質問を先生にされたことがありますよ。みんな答えに困ったものです。先生の模範解答は「空間中に存在する組織化された音のつらなり」というものでした。理論的にはそのとおりだと思うけど、まるっきり血のかよっていない答えだと思いましたね。建築家の友だちが自分の作品を「音のしない音楽」と表現したことがあったんですが、僕にはこっちの表現のほうがよっぽどしっくりきます。なぜって、彼の作品は音とまったく関係がないのに、感情にうったえかけてくるのですから。僕は、音楽とは命の発現だと考えています。より強く魂をゆさぶる音楽がより良い音楽なんです。

ヤーブロー:あなたがこのゲームの作曲をしていると知った幾人かの熱心なファンから007インサイダー宛にメールが届いています。差出人の多くはミュージシャンで、『24』の熱烈なファンです。どんな風にすれば成功することができるか、彼らにちょっとアドバイスしてもらえませんか?

カレリー:僕の経験から言わせてもらえば、この業界で成功したのなら、作曲家としての技術を伸ばすだけじゃなく、しっかりとした人間関係を育てることが大事ですね。あとは作曲活動をしている人と仕事上のかかわりがある人に近づいて、辛抱強く待つこと。僕も最初のシリーズ、USA局の『ラ・フェム・ニキータ』の仕事がうまくいくまでは、作曲家以外の仕事も一通りしましたからね。1987年にニューイングランド音楽学校を卒業した後、ロスアンジェルスのハイテクデジタルミュージックの会社に、ソフトウェアスペシャリストとして就職したんです。そこである作曲家と知り合ったんですよ。彼はソフトウェアに問題を抱えていて、僕の助けを必要としていました。しばらくすると、彼らのうち何人かと仕事上の友人関係ができました。僕が彼らにとって頼れる助けになったからです。彼らの手伝いをするのは楽しかったですよ。
このことがある作曲家との関係を築くことにつながったんです。その人の名はマーク・スノー(数々のプロジェクトを手がけてきた作曲家で、中でもXファイルは特に有名)。マークは最初、僕が作曲家だってことを知らなかったんだけど、最後には僕が最初の仕事に就くのを助けてくれたんです。周囲と良い人間関係を築かないでいたら、こんな幸運はおこらなかったと思いますね。前にも言いましたが、音楽関係の編集者として働いたことだって、より良い作曲家になるための勉強になりましたよ。しっかりとした夢があって、こういった作曲の仕事をやる気があるのなら、最終的な目標にすぐには関係がなさそうでも、いろいろな仕事を経験するのはいいことだと思います。あくまでもこれは僕の経験からだけど、本当にこの業界に焦点を合わせている限りは、ね。

ヤーブロー:テレビや映画と違ってインタラクティブなメディアの作曲をするうえで直面した最大の課題はなんでした?

カレリー:作曲の対象が、視聴者、つまりプレイヤーが完全にコントロールできる媒体だということですね。『24』の音楽を作曲したときは、長さが決まっていました。誰が何度見てもこれは変わらないわけです。ところが、『エブリシング オア ナッシング』のプレイは、まったく同じになることが絶対にありません。そこで僕は、生き生きしていて、なおかつプレイヤーの判断やペースに順応する音楽を作ることをこころがけました。
EAの希望は最初から首尾一貫していて、プレイヤーに映画のような雰囲気を体験してもらうことでした。つまり、プレイヤーにボンドの映画の主人公になった感じを味わってもらおうというわけです。ですから、プレイに合わせてできるだけ自然に盛り上がる音楽を作曲する必要があったわけです。これはなかなか挑戦のしがいがありましたよ。EAの人たちも本当に協力的で、僕たちは常に助け合いながら作業を進めたんです。

ヤーブロー:『エブリシング オア ナッシング』の作曲作業にかかった時間はどれくらいですか?

カレリー:7月くらいに始めて8月28日に終わりました。僕が作曲したのは約96分のゲームの原曲です。出来には満足しています。ファンにも満足してもらえれば嬉しいですね。

ヤーブロー:ゲームの作曲をする前に、ゲームをプレイしたり見たりすることはできたのですか? それとも手探りで作業を始めたのですか?

カレリー:最初はストーリーの資料をベースに、いろいろ考えながら作曲しました。でも、その資料というのが300ページ以上もある代物でしてね。ほんとにすごい量でしたよ! この点も、アニメーションの作曲をするときと似ていましたね。製作作業の進展にともなって、アップデートされたゲームのDVDが少しずつ送られてくるんです。あれは助かりました。グラフィックを見たり、ゲームデザイナーの考えを聞いたりすることで、たくさんの情報を得ることができましたから。

ヤーブロー:『エブリシング オア ナッシング』の中で気に入っている曲はありますか?

カレリー:1つだけ挙げるのは難しいですね。でも、一番最後の曲は書いててとても楽しかったですよ。ボンドが最終的に勝つシーンですね。ゲーム的にだけじゃなく、プレイヤー的にも、「これにて一件落着」って感じがすごく表現されていると思います。とにかく僕にとって楽しい仕事だったんで、ファンにも同じくらい楽しんでもらいたいですね。
このあたりでインタビューを終わりたいと思います。ファンの代表として、『エブリシング オア ナッシング』のプロダクションチームの皆さんとカレリーさんには、心から「ご苦労さまでした!」と申し上げたいと思います。

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