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霊 性 霊 性:シャミノと霊魂

(Part 9 of 10)

リタニアの死人達は昔から落ち着かない性分だったようです。なぜなのかはよく分かりませんが、ブリタニアの大地が生命力に満ち溢れているために、命を失った肉体にさえもその記憶を呼び覚まさせるのかもしれません。

いずれにせ、私の最後の逸話は礼儀作法を忘れてしまったある町の墓場の住人達にまつわるものです。ただ、これは単に一人や二人の幽霊の話ではなく、生命を持たないさまよえる者達がまとまってかかった疫病のようなものだったようでした。ほとんど毎晩、死体のグループが騒ぎを起こし、それもただ目的もなしに徘徊するのではなく、効率的に計画性を持って恐怖と破壊行為を行い、それは裏で悪い誰かが操っているに違いありませんでした。

町の人々には、この問題が単に何人かで松明と熊手を持って解決できるものではないということがすぐ分かりました。そこで、彼等はブリテンの国王に助けを求めて使いを送りました。

彼等の陳情は迅速に答えられました。何とロード・ブリティッシュはブリタニアの最初の英雄であり国王陛下の最も古い親友である、レンジャー・シャミノをこの問題を解決すべく送り込んでくださったのでした。

シャミノは到着するとすぐに剣と弓矢とシールドで仕事に取り掛かりました。うろちょろしている幽霊達はすぐに動かない腐敗した肉の塊になっていきました。進む道が開けたところで、彼が墓場へ入り込んでいくと、そこには新しく空けられたトンネルが見つかりました。その奥には古代の地下の墓地があったのでした。

じめじめした呪われた地で、シャミノは問題の源を発見しました。それはリッチと呼ばれる第一暗黒期からいた古く恐ろしい強い霊でした。数百年にも渡ってこの悪霊は真っ暗な墓の中で眠っていたのでした。しかし、最近眠りからさめ、地上で生きている者たちに対して悪行を始めたのでした。

シャミノはこれを見つけ、剣と呪文による戦を一晩中行い、ついにこれを征伐しました。このようなすばらしい戦いをさらっと話してしまうことにご不満かもしれませんが、実はこれはこの物語の序章に過ぎなかったのです。

悪霊が死んだ後、シャミノは壮絶な戦いの傷を癒すのと本当に悪霊達がいなくなったかどうかを確かめるために、しばらく町に残ることにしました。

残っていて本当に良かったのです。リッチが殺されて2晩と経たないうちに、精神的な疲労と恐怖で半狂乱になってしまった町のひとりの少年がシャミノの所に連れてこられたのでした。

少年はやっと話ができる状態に静まると、こう話しました。悪霊はもういなくなったということで、わざと一時間ほど墓場で過ごしてみようと思い立ったというのです。しかし、彼がそこに着くや否や這いずり回る死体ではなく、わめきちらす霊魂たちに取り囲まれたのでした。彼等が何と言っているのかは分かりませんでしたが、その叫びの持つ絶望感と暴虐感は恐ろしいばかりのパワーで単なる死体と接するほうがよっぽど良いと思えるほどでした。

シャミノはリッチの悪行により何物かが蘇り、リッチがいなくなってもそれが残っていることにさほど驚きはしませんでした。そこで、彼は1日かけて準備をし、その夜、真夜中の時間から1時間ほど前に再度墓場に行きました。

墓場の門をくぐって1分も経たないうちに、彼は幽霊の雲に取り囲まれました。そして、彼等の悲しみにあふれた意味不明の嘆きと絶望の声は彼の心を引き裂こうとしました。シャミノはこれらの霊に悪を感じませんでした。しかし、恐ろしく孤独な絶望感が彼の心と精神をかきむしりました。

けれども、シャミノは町の少年より頑丈にできています。彼の心から叫びを消し去り、(霊達は肉体的には彼を触るパワーはなかったのです)ある準備に取り掛かりました。そしてついに一時的ではあれ、彼はその技量により霊達を静まらせ、シャミノの前に留めさせたのでした。

そして、シャミノは最初の霊に向かってこう言いました。「そこのお前、話すが良い。なぜ夜を荒らしに出てくるのか簡単に話すのだ。」

霊はため息をついて言いました。「私は、生存中、大金持ちで富に満ちた裕福な生活を送っていた。しかし、私は私の回りの誰も助けるようなことはしなかった。そして、今、私の人生が何の意味もなかったことを知ったのだ。」

シャミノは言った。「お前はプライドの高い人間だ。しかし、それはどこへ行ってしまったのだろう?自分の回りを見てみるが良い。お前が無視した貧しい人々と何ら変わらないみすぼらしい墓でお前は眠っている。休みなさい。そして、謙譲の死に慰めを求めるのだ。」

霊はシャミノの言葉を聞き、理解し、そして消え去りました。

(さて、単なる言葉だけで徘徊する霊が静められ、消え去ることなどおかしいように思われるかもしれません。しかし、レンジャー・シャミノは普通の男ではありませんでした。霊性について彼が語るとき、彼は権威を持ってそれを語りました。すると超自然界のクリーチャー達も彼の言葉に服従させられたのでした。)

そして、次の霊が話しました。「俺は生きている間、嘘ばかり言っていた。俺がヒーローだとか貴族だとか、持ちもしないスキルを持っているとか。そうすることで、友と富を手にしようと思っていたのだ。そして、今、だまして手に入れたすべてが、偽りであったことを知ったのだ。」

シャミノは応えました。「それでもお前は、まだ自分が違うもののふりをして、生きている人々の前に来て彼等を悩ませているのだ。不誠実を捨て、お前自身になるのだ。誠実の死に安らかに眠りなさい。」

3番目の霊が言いました。「拙者は、生存中、男の中の男と自分を考え、我がオオカミ、弱いものが獲物だと考えていた。彼等の少ない持ち物を奪い取り、自分自身の蓄えとしたのだ。しかし、今は悲しみだけが残った。拙者は誰よりも嫌われ者だったのだ。」

「それなら、なぜ、生きている者達をいまだに苦しめるのだ。」シャミノは訊きました。「お前は、生前の自分の慈悲のなさを嘆いている。しかし、私は安らかに眠り、死から慈悲を学ぶことを命ずる。そうすることにより、汝のような痛みと悲しみさえ癒えるのだ。」

「私は生前、危険から逃げてばかりいました。」4番目の霊が語り始めました。「私が大切にしていた人たちが命をかけて立ち上がり、そして死んで行った時にさえもです。そして、今、私はあの時、彼等と共に栄光と安らぎの死を迎えることができていたら、この罪深く空しい人生よりはるかに良かったと分かったのです。」

「そして、お前はいまだに同じ道を歩んでいるのだ。」シャミノは微塵のやさしさも示さずに言いました。「恐れを捨てて、勇気を持って死の神秘を受け入れなさい。お前の友や愛した者達は、お前を待っているのだ。」

5番目の霊が話し始めました。「私の人生は、罪深いものを助け、彼等の友情を得るためだけに費やされた。主がそう言えば、無罪の人を陥れるように話をした。私の犯した過ちを償うことはできないのだろうか?」

「お前は自分の行為の償いをしたいと言う。しかし、すべての人間が直面しなければならない審判からお前は逃げようとしている。正義を欲するのなら、正義の死を見つけなさい。それが結局すべての人にとっての正しい判決なのだから。」

「私はしみったれた人生を送りました。」6番目の霊でした。「私は一人で自分の富の中に座り、誰に対しても何ら重要なことはしませんでした。お金のほうが大事だったので、雇うべき者に対してちゃんとした仕事すら与えませんでした。私のお金はどこへ行ってしまったのだろう。」

「お金はお前の手の届かないところへ行ってしまったのだ。しかし、唯一お前の力で献身を示すことのできることがある。それは、この惨めな不死の姿を死に捧げることだ。死はお前の献身を待っているのだ。」

さて、2つの霊魂が残りました。月の光に渦を巻き、しばらくすると一つが話を始めました。

「私は生前、ある男に使えました。彼は私を愛し、私のサービスと友情を他の何よりも評価してくれました。しかし、私は彼を裏切ったのです。より多くの富と力を求めていったのです。そして、今、私は得たものは何もなく、逆にすべてを失ってしまったことに気付いたのです。私が使えた者達はすべて私を虫けら同然に扱ったからです。ええ、私は虫けらそのものでした。」

「お前が犯した悪行は大きい。」シャミノは威厳を持って言いました。「そして、私にはそれを放免してやることはできない。しかし、お前がまだやっていない最後の義務があることを悟りなさい。名誉を持って最後の死のベールをくぐり抜けるのだ。」

こうして、最後の幽霊が微風の中に漂っていました。この霊はシャミノが促すまで話そうとはしませんでした。

「霊よ、話すが良い。そして、不自然な目覚めの中でおぬしを苦しめている罪を我に告白するのだ。」

「私は罪を犯していない。」幽霊が応えました。「というのも、私は最善を尽くしてすべての徳を尊重しているからだ。」

「そうかもしれぬが、ではなぜ、死後にさまよい続けるのだ?」シャミノは聞きました。

「私は死んだ幽霊ではない。」霊魂は応えて言いました。「以前この地に取り付いていた悪霊が私の体から魂を勝手に取り出したのだ。私が肉体といっしょになるよう、祈ってくれ。そうして、私の正当なこの世での生涯を継続させてくれ!」

さて、このようなことはあり得ない事象ではないのだが、シャミノの鋭い感覚には生きている精霊と死んだ影の違いは、力強い若い樫の木と大昔の腐った切り株ほどはっきり判るのだ。

「友よ、お前は間違っている。」シャミノはできる限りのやさしさを込めて言いました。「お前は本当に死んでいるのだ。それは私が保証する。誓ってもいい。お前は最後の休息につき、生きている者達の邪魔をするのは、もうやめるのだ。」

「嘘だ!」霊魂が叫びました。「私は動き、見、話しているではないか。どうして私が死んでいるのだ。私は生きている。生きているのだ!」そして、霊魂はシャミノの拘束から逃れ、彼を襲おうとしました。しかし、シャミノの防御はしっかりしており、また、他の霊魂達がいなくなったため、幽霊の超自然的なエネルギーは弱まっていたのでした。

そして、シャミノにはなぜこの霊魂がこの世に縛られているのかが分かりました。それは、霊性を持つ者が、その他の能力の低い者達には見えない事柄が見えてしまうという性質によるものでした。このクリーチャーはとてもひどく呪われていたのです。しかも自分自身で自分に呪いを掛けていたのでした。他の幽霊達は彼等の罪にさいなまれていたのに、この幽霊はその知識を隠すことで自らを痛めつけていたのです。幽霊は自分に嘘をついて、死から臆病にも逃げ惑い、自身とその本質を嫌っていたのです。ここに、この幽霊は3つの原則(真実、愛、勇気)のすべてを拒絶していたのでした。3つの原則が合わさると究極の徳である「霊性」となるのですが。

シャミノはしばらくそこに立ち、哀れなモノを見入っていました。そして、ついに言いました。「私はお前に何もしてやることはできない。その存在として自らの道を行くが良い。もしそれが『存在』と呼べるものなら。」そして、彼は彼の防御の呪文を解いてそこから永遠に去って行きました。

この幽霊ですが、その後もこの墓場を取り付き続けたそうです。それには、もはや生きるものを恐怖に陥れるパワーはありませんでした。幽霊は、その辺りをうろつき、夜の闇と自ら作り上げた幻想にうめき、ため息をついていたということです。

 

 
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