序 章 (Part 1 of 10)
嵐は東の海から現れ、正午には海岸線に辿り着き、長旅の再開を遅らせた。 乗組員はただのスコールと呟くと、次の港に向かう準備のため帆を降ろした。
風は木々をゆすぶり、互いにそしてピシッと音をたてさせた、そして雨は危険な沼地を増殖させ、王道を通る以外旅を続けさそうとさせなかった。一休みする場所など到底あるはずが無かった。旅人たちは 農家が牛を町の市場連れて行く際に一服するときに立ち寄る建物を見つけた。 幸いにも今日は牛たちと合席することはなかった。ただそこには3人のびしょ濡れの旅人がたたずんでいるだけだった。
1人目は、ずんぐりむっくりの中年男、商品を仕入れいくために町に向かう商人であった。2人目は女戦士、家族と短い休暇を過ごした後、仲間の元へ戻る途中であった。3人目は1人目より幾分若いが、他人と関係を持つのが苦手のようでもある。 3人は暖をとりながら、自分達が持っているわずかながらの食料を差し出しあいながら、嵐が静まるまでしばし待った。
昼過ぎ、商人と女性戦士は井田端会議に鼻を咲かせた、もちろん3人目の男は会話に加わるはずはない。何かを考えているのか止め無く屋根に打ちつける雨音に聞きいっているようだった。 共通の話題はすぐに底をつき、やがて螺旋のように絡み付く哲学的な論争へと発展していき、 やがて話題は「徳」に移っていった。このブリタニアで8つの徳の意味する事はこの世界を理解することでもある。
全てのことを否定的にとらえる女戦士はこうつぶやいた。「徳って何よ?結局、権力者が謙虚な人達をそそのかして自分達の至福を肥やすためのうそでしょ。金持ちの男や貴族達が今までに徳についてまじめに語ったことってある? ある人は正直をあらわすために泥棒を捕え、ある人は義務を果たすために脱走兵に鞭を与える。そういう物が徳でしょ。」
「まだまだ若いね。」と商人が返答した。「私たちは平手打ちと怒鳴り声で台所に入らないように調教された犬といっしょかな。そうじゃないでしょ。徳は我々自身をもっと高い位置に導き、より人間らしくする為のものでしょ。 そう、なんて言うかそれは我々自身が進歩する為の概念と思ってみてくださいな。」
3番目の男は黙っていられなくなって会話に加わった。 「ちょっといいですか? この件に関してはなんですが、なんて言えば良いのでしょ。お二人とも少し誤解しているところが多々ありますね。」
女戦士は苦笑を交じり、「では、あなた様の崇高なるご理解の破片で我らの腐った魂を照らしたまえ。」 すかさず商人も、「どうかお願いします。我を導いてください。」と続けた。
「まずはあなた。」男は続ける「あなたは徳が謙虚な人たちを弱い立場のままにしておくのに役立つとおっしゃっていたが、私はその逆、弱い人たちを強くするために存在すると考えています。徳が高い者は例え国王陛下の前にでたとしても決してひるむことなどないでしょう。なぜか、国王が多大なる犠牲を払えども長い間に渡って徳を探求していることくらい、お二方も存じ上げている思います。
「そして貴殿、 あなたが主張する概要はいいと思いますが、しかしながらそれでも不十分です。 あなたが言うところの徳の概念はそんなに生易しいものでありません。非現実的です。 そう例えるならば、噂だけで食べいる気になっている、実際の味を知らないグルメ気取りです。
「私が考える徳の概念とは…。毎日の生活への指針だと思うのです。その結果、信念はよりいっそう固くなり、迷うことは無くなると考えています。例えるならば生きることに対しての道標であり、見当違いの地図をもっていてもそれはまったくの紙屑だと思っています。」
「なんだかお婆ちゃんに説教されているみたい。」と女戦士、「だけどそれがどうしたと言うの? そんな古臭い思想で、仮に、仮によ。1農家の端くれが国王になるチャンスなんてあるかしら?あなた、本当にそんなの可能だと思っているのかしら?」
「その通り」と商人。「君は私の概念を生易しいと言うけれど、逆に言えば君の概念には実態はあるのかな? 徳の概念を毎日の生活に持ちこむと言うことはどういうことか説明できるかな?」
「まさに。」男は続けて、「もしよければ堅苦しい議論ではなく、私の信念をいくつか物語から掻い摘んでお話させていただきたいのだが。そちらの方がより理解して頂けると思います。」
彼らもいい加減、議論に飽きが来ていたところなので素直に彼の話に耳を傾けた。 男はパックからワイン皮を取り出し一杯やるとしばらくして 皆に飲むようにと勧め、そして彼は話し始めた。