ケンタウリへの旅
EPISODE 35:パート1 (注:このパートは九部作で完結します。)
プリア!
プラヴィンは彼女を見た。薄青い光の輪に包まれ、彼女の身体は冷凍ジェルに濡れてなめらかに見えた。プラヴィンの腕をつかんだ屈強なスパルタンの兵士はシュレッダーピストルを持ち上げ、ラルの視界にはその銃身しか映らなくなった。もう一人のスパルタンの兵士がプリアの腕をつかみ、荒々しく彼女を引きずり出すと、彼はその銃身をプリアに向けた。
彼は怒りに駆り立てられて突進した。まだ彼の腕をつかんでいた屈強な男が何かを叫び、プラヴィンの腕に痛みが走った。そして、彼のユニフォームに取りつけられていたクィックリンク、サンチアゴの檻のキーコードがむしり取られるのを感じた。彼は大股に四歩でプリアの冷凍カプセルの置かれたスペースへと横切り、彼女の腕をつかんでいるスパルタンの兵士の顔を指で引っ掻いた。
彼は彼の指がスパルタンの顔に命中したのを感じた。悲鳴が上がり、彼は両腕を広げて彼女の目の前に身体を投げ出した。彼の背中の筋肉という筋肉が、シュレッダーピストルの弾丸を予感して固くなった...。
彼の背後で爆音がこだました。無数のシュレッダーの弾丸が狂ったように空中を切り裂き、部屋中を横切ると同時に、彼は心の中で叫び声を上げた。
彼は死を覚悟したが、何も起こらなかった。彼は自分の身体がプリアに衝突するのを感じた...彼は冷凍カプセルの冷たいガラスと、彼女の身体の柔らかくしなやかな感触を感じた。またひとしきりシュレッダーの弾丸が無数に空間を満たし、冷凍カプセルを打ち破ると同時に、彼はプリアを抱きかかえ、身をよじると前に向かって突進した。
ガラス。彼はプリアをしっかりと抱き、彼のもう片方の手は粉々になった冷凍カプセルのガラスの破片をつかんでさえいても、彼女の香りと、彼の顔にかかる彼女の髪の感触を感じていた。スパルタンの兵士の顔がぬ
っと現れ、彼は突進すると、手にしたガラスを敵の肩口に突き立てた。同時に彼の手にもガラスが食い込む感触があった。
彼も同じ乗組員だったのだ。プラヴィンは思った。しかし我々は皆、今はそれぞれ違う目的で戦っている。
その男はへたりこんだ。プラヴィンは暗がりに向かって、また別の冷凍カプセルの列が待つ所へと走り続けた。足が燃えるようだった。ベイのライトが一瞬またたいて消えた。叫び声が上がり、彼の背後のハッチから人駆けこんで来た。
「武器をよこせ!ユニティ号最高責任者の名に於いて、このベイを占拠する!」その声は叫んだ。
ピストルやスタングレネードの衝撃が部屋中を揺るがした。彼の背後で炎がひらめき、彼の周囲に落ち着かない影を映し出した。彼はプリアを見下ろした...彼女は顔を半端な方向に曲げ彼を見上げていた。まだ冷凍睡眠の疲れが残っているようだった。
通路のトンネルをくぐった先には、また別のベイがある。それはガーランド船長のベイで、乗組員達が大勢待っているはずだった。
彼は走った。苦しさのあまり、涙が顔をつたった。彼の背後で争う声が聞こえた。スパルタン連合の兵士達の厳しい声だった。
彼はブラフをかけていた。屈強な兵士がもぎりとったコードキーには暗号などインプットされてはいなかった。もしもスパルタンが生き残れば、このベイを占拠し、その上でサンチアゴをも取り戻すことはできるだろう。
彼がトンネルのところまで辿りつくと、その中は赤いライトに照らされていた。間もなく切離されるということを意味していた。彼はハッチの横にある小さなタッチスクリーンを押し開け、ハッチを開くよう入力した。
やがて赤いライトが消えた。
彼はプリアを見た。彼女の裸身は彼の腕の中でくたくたになっていた。彼が片手を上げると、彼の手が赤いねばねばした液体にまみれているのがわかった。彼は喉がつまった。
彼は彼女の身体を裏返してみた。シュレッダーの弾丸が彼女の背中を直撃し、小さな深い傷が星座絵のように広がっていた。彼は頭を振り、彼女の背中に手のひらを押しつけ、流れる血を止めようとした。
彼は彼女を前に向けさせ、彼女の顔を覗き込んだ。彼女の目は痛みでぼうっとしていたが、彼を見た。彼女は微笑んだ。
「プラヴィン。」