ケンタウリへの旅
EPISODE 28

「そして、引っ張られるのを感じたら...押せ!こうだ。」シェン・ジは素早い動きで両手と胴に力を込め、屈強な少尉をたっぷり2メートルは投げ飛ばした。その少尉はしばらくくるくる回って着地し、ひねくれた喜びの笑みを浮かべた。乗組員達は二人の回りを取り囲み、素直に賞賛しながら知ったかぶりの知識を披露し始めた。

「それができるまでにどれくらい時間がかかりますか?」まじめそうな若いクルーがたずねた。 「わしはすでに体得しておる。」ヤンは静かに答えた。

「いえ、私達のことです。どれくらいで覚えることができるのでしょう?」彼は言った。 「練習に一万時間、で、もう一万時間の練習だ。全ての動きが精確にできるようになるまで。あるいは重力ゼロの中で戦うのだ。」

太くて黒い眉をした、せっかちなもう一人の少尉がタッチパネル用のポインターペンを振りかざした。「教えてください、どうやって重力ゼロの中で戦うのですか?あなたの技術は重力ゼロの環境下でも使えると推定されているのですか?」

「重力ゼロでも戦うのは地上でも同じだ。ただ、あらゆる方向に飛んでいってしまう。」 シェン・ジは軽く答え、タオルを拾うと首筋や腕をぽんぽんと拭った。「講義終了。次回はコイリング・モーションの練習だ。一万時間だぞ。」彼等はお行儀良く笑い、口々におしゃべりをしながら休憩に入って行った。

シェン・ジは、興味津々の生徒達の矢のような質問を避けるようにその場を去った。サンチアゴが彼に背くようになってから、彼は以前よりも頻繁にこの第四ベイに来るようになっていた。第四ベイの乗組員は少しばかり迷っている風で、地球でも、この船でも出会ったことのない数の、素直な目をした求道者達だった。彼はかみそりのような鋭さで彼等全員を見たが、しかし彼等の大半は...。

実際は子供だった。規律もなく、不愉快なことに対する忍耐にも欠けていた。彼等はまだ、「困難に立ち向かう術」を知らなかった。

彼はにわか作りの本部に向かった。だが、彼等が彼の教えに対する、まるでじゃれつくような尊敬は彼の自尊心の一部をくすぐり、うれしかった。それに、これはもっと大事なことだが、彼等は、彼の思い通りに一個小隊を作り直すことができるという意味で、彼に新しい力の素を与えていた。

彼はフロアハッチを開き、一段低い位置にある、混み合った睡眠用の宿舎へと下って行った。乗組員達のほとんどは、冷凍睡眠カプセルにマットレスを敷いて作りなおした棺桶のような形のベッドで眠っていた。ヤン自身は、小さなデスクと瞑想用の空間のある、彼専用の宿舎を持っていた。彼に最初与えられた宿舎は指令センターの近くだったが、第四ベイ駐在の士官から無理やりこの場所を手に入れていた。

ラン士官というのがその人物の名で、不幸なことに、彼は冷凍睡眠から生還することができなかったのである。

 

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