ケンタウリへの旅
EPISODE 21:
「密航者だと?そんなことが可能なのか?」ダナ少尉とカッシアーノ少尉からの知らせを受けてプラヴィン・ラルは言った。 「どうして密航などできたのでしょう?
冷凍カプセルがなければできないはず、」ミリアムが、指令センターの一角にある小さなグレーのベンチからたずねた。 ラルはすでに大型のタッチパネルに船内の略図を呼び出してあり、問題の冷凍ベイに焦点を合わせているところだった。複雑に絡み合ったケーブルや回線網がごたまぜになった図表が現れ、次から次へと蛇行して行った。「どこがどこにつながってるのかわからないぞ。」
ザハロフが近寄って来てその混乱を抑え始めた。「ばらばらに一つずつ確かめるのだ。」色分けされた格子状のパターンが次々に点滅した。「ここを見ろ。これらの小さな星印にリンクされた、技術者が作った覚え書きがある。これらは初期のもの...このセクションはロシアの手によるものだ。」彼は少し誇らしげに姿勢を正した。
「正確さを重んじるあなた方ロシア人が、この計画に余分な冷凍カプセルを作るのを容認したと言うことなのかしら?」半分だけ光に照らされた位置にある椅子からミリアムがたずねた。
ザハロフは腹立たしげに彼女を見やった。「これはロシア人の手によるものではない。いいか?見てみたまえ、これは2058年の経済崩壊のものだ。ここには”追加条項”がない。」
「それは一体何なのです?」ラルが言った。
「主要な技術者による声明だ。科学者達がベストを尽くし、これが正常に機能することを期待するという宣言だ。」
「それは祝福を意味するのかしら?」ミリアムは座ったまま微笑んでたずねた。
「そのような類のものではない。終結を宣言するものだ。」
「いつか、祈りに関して話合うべきだわね。」彼に向かって会釈しながら彼女は言った。
「いずれにせよ、」ラルが言った。「それは国連の定める手順にはなかったことですね。」「だが、これは伝統だ、」ザハロフが答えた。「加えて、ここには冷凍テストに関する記述が見つからん。」
「では...彼等はテストしたことを忘れたと?」
「ありえん。テストが行われれば覚え書きがあるはずだ。どの国の政府のエージェントによる技術的な覚え書きは公開されているはずだ。もしも、途中で私営の企業の手に渡れば隠蔽されることもあるが。」彼は複雑なコマンドをいくつも入力した。「完成までに、いくつの企業がこのプロジェクトに関係したかがわかるはずだ。」最後の最後に、略図上に小さな黄色いハ角形が花開いた。ザハロフはうなずいた。
「ある私企業が、ロシアの経済破綻後にこの計画を引き継いだのだ。」
ラルが進み寄って八角形をクリックした。技術者の覚え書きと共にリードエンジニアのスキャンされた画像が開いた。痩せた、青白い人物。しかし、ザハロフは右下のカンパニーコードをクリックした。
ちょうどその時、脱出ハッチがきしんだ音を立てて開き、全員が振返り見たその場所には、背の高いアフリカ系の男が立っていた。堂々とした面持ち、黒い礼服に身を包み、彼の両手は拘束されていた。一人のセキュリティー・オフィサーが彼の後ろに立っていたが、その存在は小さく見えた。
「ナブダイク・モーガンです。」その男は、深い豊かな声で言い、両手を上げた。「私はあなた方の船に出資しています。ですから私を拘束する必要はないはずです。」