ケンタウリへの旅
EPISODE 1: プラヴィン・ラル

透明なカプセルの軋む音と封印の解かれる音を聞いてプラヴィン・ラルは目覚め、宇宙船が彼の体の下で揺れるのを感じた。心臓の鼓動を感じた彼は目を閉じ、深く息を吸い、落ち着こうとつとめた。

鼓動が落ち着いたので再び彼は目を開いた。トレーニングのおかげで方向感覚の喪失感、睡眠障害、彼の身体に染みついた疲労は苦にならなかった。彼は人工呼吸装置を口から吐き出し、腕に備えつけられていた点滴装置を払いのけた。そして、腕を持ち上げ、頭上にあるガラスの蓋を持ち上げようと力を込めた。 冷凍睡眠カプセルは開いた。彼は生きていた。

彼の周りにはとてつもない数の冷凍睡眠カプセルがあった。それぞれ同じようなガラスのカプセルにおおわれており、チューブやケーブルが床に通じる導管につながっていた。幾千もの乗組員がいるのがわかったが、彼の目は反射的に彼のすぐ左にあるセルに向けられた。 彼は、寒さをものともせず、伸び上がり、そこに向かった。

ガラス越しに彼は見おろした。凍りついて青みをおびた冷凍ジェルの下に彼女の薄茶色の姿を確認することができた。ぼんやりとはしているが、彼女の濃い茶色で長い髪が見てとれる。プリアだ。安らかに眠っている。今でも思い出すことができる、彼女がいかに優しかったか、冷凍技術者が冷凍睡眠カプセルのセルを閉じ、彼女を格納する寸前の最後の強く長い口づけ。 彼はプリアを包む小さなコンソールに熟練した目を走らせた。全ては正常に見える。彼女は生き延びたのだ。いったん手動解除キーに目を留めたが、やがて冷凍睡眠棟のはるか端で警告ランプが点滅しているのを見た。この宇宙船彼は危うく危険な状態にあることを忘れてしまうところだった。彼はもう一度プリアのセルを指でなぞると背中を向けた。

彼は、空になったセルの足元にある金属の棚から、たたまれたユニフォームを取り出した。スカイブルーで、光沢があり、着心地が良いチーフ・オブ・サージェリー派遣団の制服である。胸元には国連の印があり、どの国にも属さないという文字が見て取れる。キャプテンが強く主張してつけさせたものだ。

彼はユニフォームに身を包むと、カチッと音を立てて袖に縫い込まれた小さなコンピューターのスィッチを入れた。ステータス・レポートを見る。間もなくキャプテンは冷凍睡眠から醒め、チーフ・サイエンス・オフィサーと数人の緊急サポートスタッフがそれに続く。宇宙船の船体は大部分にわたり損傷を受けており、3つの内2つの水耕栽培ユニットも損傷を受けている。融合駆動装置は閉鎖されていた。

プラヴィンは「任務復帰」のコードを入力すると、指令棟へと急いだ。船体はものすごいスピードでケンタウリ系へと向かっており、もはや融合駆動装置なしではその動きを止めることは不可能だった。

ログエントリー受信
プラヴィン・ラル、外科主任
覚醒後、ミッション異常を確認。直ちに指令棟にてキャプテンと合流します。計画に異常をきたした原因については調査準備済み。データコアの整合性が正常であることを祈ります。これは人類の最後の希望であり、新しい世界へ伝送すべき我々の知識の全てがここにデジタル化されているものです。過去40年の間に地球は滅び、我々の未来はまさにこの損傷を受けた宇宙船の心臓部にかかっているのです。

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